彼女が綺麗に痩せた理由 - ダイエットショートストーリー

第2話 真実に気づいた女

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試着室でファスナーを破ったデブ女。

あのすました声の店員は今頃休憩室でそう言って笑っているだろうか。

明日香はOLに人気のブランドショップで少し小さ目のワンピースを試着しようとしてファスナーを壊してしまった。

試着室を出るとすぐ、何か言いたそうな店員に「これください」と告げてレジに向かった。

ファスナーの壊れた服に出すには高すぎる金額をカードで支払い、気を使って別の店に行こうと提案する友人の加奈子と別れてひとりで帰ることを選んだ。

いくつもの紙袋を抱えてデパートを出ると、そのまま駅に向かって歩き始めた。

ところが、7〜8分歩いたところでにわかに空が暗くなり、ポツポツと雨が降り出した。

どうしよう? 駅まではあと15分も歩けば着くが、両手に荷物を持って雨の中を歩くのはちょっと辛い。

明日香は全部の紙袋を左手で持つと、右手を上げてタクシーを止めようとした。
しかし、止まってくれるタクシーはなかなかいない。

何台か通り過ぎた後、ようやく一台のタクシーが止まった。

ホッとして荷物をまた両手に持ち直し、乗り込もうと屈みながら、運転手さんに言った。

「すみませんが、駅までお願いします」

すると……

「駅ならすぐそこだよ、デブ!」

信じられないような言葉とともにバタンとドアが閉じてタクシーは走り去ってしまった。

驚いてのけぞった明日香は、すぐには何が起きたのか理解できず、おかしな体勢のまま立ち尽くした。

エキナラスグソコダヨ、デブ……

そうか、デブは雨が降ってもタクシーに乗せてもらえないんだ……
それに、試着室でファスナーを壊して店員に笑われるんだ……

もしかしたら加奈子だって、自分みたいなデブとショッピングしているのは恥ずかしかったかもしれない……

これまで自分は人よりほんの少しぽっちゃりしているだけだと思っていた明日香だったが、まわりの人は自分を“デブ”だと思っていることに、今日、はっきりと気づかされた。

涙が頬を伝ったが、いつのまにか激しくなっていた雨のせいでよくわからなかった。

ドサッ!

濡れた紙袋が1つ破れて、デパ地下で買ったフルーツタルトが地面に落ちた。
朝一でなければ手に入らない、限定品のフルーツタルトだ。これまでの明日香なら、慌てて拾ったに違いないが、今の明日香はタルトなど目に入らない。

「痩せてやる!絶対に痩せてやる!」明日香は呪文のようにつぶやきながら、降り続く雨の中を駅に向かった。


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