彼女が綺麗に痩せた理由 - ダイエットショートストーリー

第3話 ダイエットを決意した女が必ず陥る罠

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「ちょっと食べなければ、すぐ痩せるわよ」

コーヒーには砂糖を入れない加奈子がそう言った。

身長は160pあるが、洋服のサイズは7号だ。

「そっか、食べなければ痩せるのね」

「そうよ、ダイエットなんて結局は摂取カロリーと消費カロリーの引き算なの。7,000カロリーが1sに相当するから、食べないか運動するかで7,000カロリー分なんとかすれば、1sは確実に減るの。 そうねぇ、明日香なら基礎代謝量(※1)は1300カロリーぐらいだから、一日中寝てたって、5,6日食べなければ1s以上減るわ」 (※1)人間が何もしなくても生きているだけで必要になる基本的なエネルギー量

加奈子が笑いながら言う。

「5,6日かぁ……」

「ちょっと、明日香、本気にしないでよ、これはあくまでも計算上のお話なんだから。普通に生活するなら……そうね、1日2,000カロリー程度は必要だから、それより少しだけ減らせばいいのよ」
深刻な顔でつぶやいた明日香を見て、加奈子が慌てて付け足した。

そうか、7,000カロリーで1s減るのか……よし、7,000カロリー、7,000カロリー・・・

最早加奈子が付け足す言葉など聞こえていなかった明日香は、今、この瞬間から絶食を決めていた。

太った体のせいで大金を無駄にし、ブティックの店員に笑われ、タクシーに乗車拒否されて、限定タルトもダメにして、びしょ濡れで駅まで歩いた明日香の決意は固かったのだ。

しかし、明日香は、この時「ダイエットを決意した女が必ず陥る罠」に自分も落ちそうになっていることに、まだ気づいていなかった。

3日後。

「うそっ?ホントにまだ食べてないの?」

加奈子が驚きながら言う。
食いしん坊の明日香が3日も野菜ジュースやお茶だけで我慢しているなんて信じられない。

だが、うつろな表情の明日香は、心なしか頬のふくらみが減ったようにも見える。
何より、あの明日香が、シロップの入っていない紅茶なんか飲んでるんだから、異常事態だ。

「明日香、絶食は体に悪いよ……」 責任を感じて別のダイエットを薦めようとする加奈子を遮って、明日香が嬉しそうに言った。

「大丈夫よ、加奈子!ジュースはちゃんと飲んでるから。それにね、もう1.5sも減ったのよ!」

今、まさに、ダイエットの罠に陥ったことに、明日香はちっとも気づいていない。


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